「突っ込み大魔神」とは、とある走行会にゲストで来ていた小林可夢偉選手から頂いたありがたいお言葉。特定の誰かを指した表現ではなく、アマチュアのドライバーは基本的に大魔神なんだそうです。
お言葉の意味は要するに、「コーナーでギリギリまでブレーキを遅らせて突っ込む走り」のこと。レイトブレーキとかミサイルとか表現されるやつですね。すごく”らしい”表現で私は好きです。
同じくプロドライバーの藤井誠暢(とものぶ)選手からも同様の指摘がありました。こちらはもう少し具体的な話で、「もし同じコースをプロとアマチュアが走った場合、コーナーのボトムスピードはプロが一番遅いはずだ」とのこと。ブレーキをギリギリまで遅らせる=上級者ではなく、むしろサーキット初心者がやりがちな初歩的勘違い。しっかりと減速して、素早く車の向きを変えて加速することが大切なんだと、丁寧に解説してもらいました。
サーキット走行についてわかったつもりになっている私のような人間が思う、「プロなんだからコーナーでもどこでも全体的に平均速度が高いはず」というある種当然のような考えが、実はアマチュア特有の勘違いなんだそう。私も意外だと思いました。
実はプロドライバーの講習会では、アマチュアはみんな突っ込み過ぎだと言われることが結構多いんですよ。少しでもブレーキングポイントを奥にして、少しでもコーナリング中の平均速度を上げよう!みたいな、そんなイメージを捨てろと。
実際プロの方が(当たり前ですが)速く走れているわけで、向こうの言ってることは間違いなく正しく、誰もが突っ込みすぎであることは事実のハズ・・・。
でも言われたからって実行するのは簡単じゃないですよ。その後コーナーで”突っ込みすぎないこと”を意識して走ってみるんですが、わかっていてもやっぱりゴリゴリに突っ込んじゃうんですよねぇ。なんででしょ。走行ラインやアクセルワークについて細かく考えるより、ブレーキで頑張って突っ込んだほうが簡単に速く走れる気がするからですかね。まぁ気のせいなんですが。
ギリギリまでブレーキを遅らせたところで、当然オーバースピードからのアンダーステアが出るのでタイムは出ず。わかっているけどやめられない、それが大魔神。
GTのオンラインレースでも、特にテール・トゥー・ノーズでもない遠ーく離れた距離から、超強引なレイトブレーキでインに突っ込んでくる大魔神ミサイルを多く見かけます。特にレースの中位〜下位ほど多い印象です。
困ったことに、レイトブレーキ対策で下手にブロックすると、追突や接触で弾き出されてレース自体の勝負権を失うので、実質こちらには打つ手がなくやられる一方。抜かれるかふっとばされるかの2択はひどいですよね。相手に大ペナルティがついたところで、大クラッシュしたこちらの順位が戻るわけでもないですし。
しかも下手すると何故かこちらに幅寄せなどの誤爆ペナルティが付くこともあるので、結果よりもキレイなレースがしたい私は無理をしないようにしていますが、まぁ順位は犠牲になりますよね。もうレイトブレーキでやられるのはいつものことなので諦めてます。DRを上げれば大魔神のいない世界に行けるんでしょうか。(現在DRはC)
以前は私もレイトブレーキに頼りがちだったんですが、リアルの走行会でブレーキを酷使し過ぎてフェードさせて死にかけた経験があり、ゲームでもブレーキがビビりがちで、大魔神化は若干抑えられるようになりました。
しかし、走行会ではブレーキに気を使ってフルブレーキができないのも良いことじゃないんです。ブレーキに関しては「突っ込みすぎ」が良くないだけで、強いブレーキでしっかり減速して曲がることは重要(藤井選手曰く「どうせABSが付いてるんだから床まで踏み込め」)なので、ゆるーいブレーキで減速しても意味ないんですよね。おかげでブレーキパッドは減らなくなりましたが!
GTのオンラインレースでも同じく、ふと気づくとブレーキを少し緩めて”節約”していました。後でロガーを見ると「フルブレーキの3割くらい」でしか踏んでないことも。こんな緩ブレーキで勝てるわけがない。
GTではどれだけブレーキを踏んでもフェードなんかしないのに、リアルでの恐怖体験で変な癖がついてしまったようです。ブレーキを壊さない程度に、出せる最大限の性能を引き出して走れるのがプロ。悔しいですが、こういうところが「違い」なんでしょうねぇ。
ただ、一度ブレーキのフェードを経験すると誰でもビビるんじゃないですかね。直線の末端でギリギリまでブレーキを粘ってフルブレーキ・・・と思ったら踏んでも全然減速しない一瞬の間。せいぜい100km/hくらいだったからコースオフせず止まれましたが、岡山国際の裏ストレートならノートニスモでも170km/hくらい出るので・・・。
今では「逆に安全意識が高まってよかったのかな?」とも思いますが、二度と体験したくないです。寒気がしてその枠は走るのを止めたくらい。走行会からの帰路でもずっとブレーキが効きが悪かったので、交差点で止まる度に前の車に追突しそうになった・・・ということもあります。(翌日整備に出したところ、ベーパーロックも起こっていたようでした。いずれにしてもブレーキの酷使が原因。)
その後、走行会では基本的にビビリブレーキになったため、ブレーキがフェードすることはなくなりましたが、「ブレーキで頑張らない分は他で補う」という方針で走ったところ、以前と同じくらいのタイムでは走れるようになったんですよ。タイムは同じでも、車を壊さず安定してラップを刻めるなら、突っ込み大魔神のメリットなんか何もないですね。
まぁゲームでは大魔神であっても大した実害はない(せいぜいレースをぶっ壊す程度)ですが、少なくともリアルの走行会では止めましょう。私みたいにゲームの世界から現実のサーキットに入ってる人間のほうが、中途半端な自信があるだけに余計危ない気がします。
あなたも私も大魔神。気を付けましょう。