ジェレミー・クラークソン 農家になるというAmazon Primeの番組が非常に面白かった。全8話。一応「ドキュメンタリー」という分類で、本業?の車とは無関係のように見えるこの番組。オススメに出てきて気になっている人も多いのでは。
元々ジャーナリストでドキュメンタリーやコラムには定評がある人ですが、この番組でも「農業」をジェレミーらしい視点で映していて面白かったです。
農園面積が4平方kmもあるのに「Diddly Squat Farm」(大したことのない農園)というネーミングなのも非常に彼らしい。直営店の名前は「Diddly Squat Farm Shop」で、看板を付けた店のドアを開けると「Squat Shop」(スクワット屋)になるという、いつもの看板ネタも健在。
ジェレミーはAmazon独占の「The Grand Tour」で車番組も続けていますが、これまでの本業とは全くジャンルの違うこの番組は飛び抜けて評価が高く、Amazon Primeの番組での過去最高記録なんだとか。なんと現時点で☆5。インチキレビューの食べログの店でもここまでにはならないでしょう。
まぁジェレミーは迷惑おじさんでもあるので、イギリスでは嫌われもの的な立ち位置でもあるようですが、ジェレミー嫌いのガーディアン紙でも「認めたくないが、ジェレミー・クラークソンの農業番組は本当に良い番組」と非常に嫌々ならがら認めざるを得ないらしい。
もちろん番組の内容は「相変わらず」なんですが、意外と大爆笑するような場面は少なく、農業の現実や苦労、大切さを痛感するような内容でした。番組の収録を始めた2019年は、大水害に日照りで農家には辛い1年だったらしく、その後の例のパンデミックで更に大打撃・・・という、そんな1年が濃縮された番組です。
番組はあくまで「ドキュメンタリー」という体ですが、何かしら演出もあるんでしょう。何が演出で何がそうでないかを見分けられるほど私は詳しくないですけどね。
農業にかかるお金の現実、補助金、申請手続きの面倒臭さ、悪天候、農園管理などなど、普段スーパーで売っている野菜や肉が当たり前のように並ぶまでにどれだけの苦労があるのか、知っているようで知らない農業のリアルの一部分が、ジェレミーらしい視点で見られる良い番組だと思います。
個性的な出演者もジェレミーに負けず面白いです。ジェラルドは何を言っているのか全くわからないんですが・・・。
「世の中キレイ事言ってる人ばっかりだなー」というのが個人的な感想。農業に対して、理想とか希望とか、社会的にどうあるべきとか、そういう上辺だけで争うのも大変結構ですが、現実もちゃんと見るべきですね。
で。ここまで高評価だと、当然シリーズ化も期待されるわけなんですが、どうやらAmazonはシーズン1だけで打ち切ることを決定したらしい。ファンは「是非とも続けるべき」と抗議活動も起こっていますが・・・一方では色々問題もあったようです。
まず、ジェレミーが超有名人であること。番組でも紹介されたDiddly Squat Farmの直営店には、SNSでの宣伝もあってかとんでもない数の客が訪れ、ド田舎の農道を2時間以上渋滞させているとか。当然近隣住民は嫌がりますよね。
他にも、直営店ではDiddly Squat Farmの生産物など地元の農産物を販売しているんですが、最近では「公式Tシャツ」なども販売しているらしく、「農産物直営所ではない」という批判もあるんだとか。公式ファンショップみたいになりつつあるのは、どこの有名店でも通る道だと思いますけどね。
人気店になれば周辺は混雑するし、迷惑客も増えるでしょう。Google Mapsで現地の写真を見てみると、直営店には人だかり。でももし自分がイギリスに住んでいたら絶対に行くと思います。
Diddly Squat Farmのある場所は、人口5000人ちょっとのチッピングノートンという街。衛星写真ではほぼ農地か草地しか存在しない。そんな場所に734万人のTwitterフォロワーを持つジェレミーが直営店を作ったら、そりゃ混雑もします。人の少ない田舎町が急に大観光地になってしまったら、長く住んでいる地元の人も良くは思わないでしょう。
まぁこれまでのジェレミーの「評価」も多分に影響しているようですね。番組の中でも直営店の設置に反対する住民の意見が出ていましたが、「何をするか分からん」「この前家を爆破していた」など、非常にもっともなご意見がたくさん。ジェレミーは確かに猛烈な人気がある人ですが、根本的には迷惑おじさんであることも否定できない事実。ご近所さんだったら確かに嫌かも。悪い人じゃないのは間違いないんでしょうが・・・。
ジェレミー自身は農場経営がとても気に入っているようなので、どこかが手を上げれば2シーズン目も作られるでしょう。
1シーズン目が中々のハプニングだらけだったので2シーズン目でどういう構成にするのか、少し難しいような気もしますけどね。何事もなく大豊作だったら、農業としては良いことなんですが、ドキュメンタリー番組としてはあまり良くないかもしれません。
だからってリアリティ番組みたいに”明らかに雰囲気の違う空気の読めないお調子者”を放り込んでひと悶着を起こさせる演出をするわけにもいかないし。
それに、「1シーズン1年」だとすれば、番組制作にかかる手間がすごいですよね。番組の最後でも紹介されていますが、Diddly Squat Farmの1年間の収益は、金額的にあまり良くなかったことが報告されています。(ネタバレになるので具体的な金額には番組をご覧ください)
確かに良い番組ですが、長期間の収録にかかる手間など、番組の費用対効果的には微妙だったかもしれません。加えて地元住民からの反対や周辺への影響も考慮し、「番組を継続しない」ということになったとすれば、まぁ仕方ないような気もします。コンプライアンスも厳しい世の中ですしね。
でもやっぱり2シーズン目が見てみたい。私は期待しています。
ちなみに、The Grand Tourの新作も発表されました。楽しみです。まぁこちらの内容も相変わらずのようですけどね。
・追記