TS030から再開したトヨタのWECでの活動ですが、2021シーズンからLMP1クラスは「ハイパーカー規定」でのレースへ変わりトヨタも参戦継続、新車はTS050の次だからTS060・・・ではなく、心機一転「GR010」という名称になりました。本当に「ガズー」という名称がお気に入りのようですね・・・。
とはいっても中身はTS050からの正常進化らしく、見た目もこれまでのプロトタイプと大きく変わらないように見えます。細かい部分で、例えば車体が大きくなっているとか、そういう違いはあるらしい。そのほか、よく見るとサイドミラーがフェンダーとの一体型ではなくなっています。
さてこのGR010、「ハイパーカー」です。一応市販車ベース・・・というより、厳密には「市販車と共通性が多い」車らしいです。ベース車ではなく、兄弟車とかそれくらいの近さだそう。GR010は分類的にはプロトタイプ。ハイパーカークラスへの参戦という意味では変わっていないようですが、いつの間にか市販車ベースではなくなっていました。
とはいえ、この手の「ロードカー」は何だかんだで売られないことが多いです。後に「かなりズルかった」ことで伝説となっているTS020も一応ロードカーベースでしたが、本当に売られることはありませんでした。日産のR390も同じ。たまにイベントで公開されるだけ。「市販車」と言いながら本当に売る気はなかったんですよね。スーパーGTのHSV-010も同じ。
でもGR010は、一応本当に売られるらしい。売るとしても数はしれていますが、まぁ1台1億円くらいはするでしょう。
これが金額的にびっくり・・・でもないのが悲しいところ。ヴェイロンが1億超えだったのは有名ですが、ケーニグセグの新車・ジェスコは3億超えらしいですし、もう金額が高いこと自体には何も感じなくなりました。今更1億だから何だって話ですよね。金額的なインパクトはあまりないと思います。
最近のスーパーカーやハイパーカーはもれなくチリトリみたいな形状で個人的には好きではないですし、高いだけで本当にハイスペックなのかよくわかんないんですよ。まんまプロトタイプみたいな車がロードカーとして買えるなら、非常に魅力的な車だと個人的には思います。私には永遠に縁のない車なのが非常に残念ですが。
さて、WECのLMP1は、ハイブリッド規定ができた最初こそかなりの盛り上がりを見せたものの、2016年のノーパワー事件を経て、2018年にはトヨタ以外のワークスが撤退してしまったので、新たな規定として「ハイパーカー規定」をブチ上げました。世界中でハイパーカーが増えていましたし、参戦するメーカーも多いんじゃないか?という期待はあったと思います。
が、意外と参戦するメーカーは少なく、参戦する風を吹かせていたアストンマーティンはいつの間にか参戦しないことになり(しかもF1の方に参戦するとか)、元々トヨタの参戦は確実としても、プジョーは参戦する気があるようなないような微妙な状態で、他には「グリッケンハウス」がプライベーターとして参戦予定とのことですが、既にプロジェクトには遅れが見られるようで、早くも不安です。
そもそもグリッケンハウスは、端的に言うと「超クルマ好きで金持ちのオッチャン」のチームですからね。メーカーの支援を受けずに自分でレースカーを作ってしまう情熱は本当にスゴイ、しかし本当にハイパーカー規定のレースカーを作り上げて、しかもレースになるほどのマシンを作れるのかどうか。いつかの日産みたいにならなければいいですが。
まぁグリッケンハウスは、私の好きな「フェラーリ・P4/5」の作成元ですし、P4/5はNur24hで上位争いもしていましたから、レーシングチームとしては意外と有力なのは間違いないんですけどね。
新しいLMP1クラスには、先述のハイパーカーの他に、いくつかのメーカーの作ったシャシーを使う「LMDh」という規定もあります。こちらは何よりも市販車ではなく共通シャシーを使っているために価格が安く、デイトナ24時間にも参戦できるのが強み。ポルシェはこちらの規定でWECに参戦するとか言われていますね。またハシゴを外されなければいいですが・・・。
ただ、LMDhは要するにこれまでのLMP2ですからねぇ。これまでのLMP2にハイブリッドシステムをポン付けしたような感じです。4社が供給するシャシーを使う、など、まさにLMP2。でもコスト的には間違いなく安いでしょうし、戦力が非常に均衡していて面白いクラスだったのも確かなんですよ。
ただ、このLMDhとハイパーカーとが同じLMP1になるので、その間のバランスをどう取るのかが難しそうです。予定としてはハイパーカーの方を遅くして、あとはBoPで上手く調整するらしいですが、さてちゃんとレースになるのか。タイム的にもLMP2なLMP1。これが次世代のル・マンです。
いずれにしても、滑り出しを見る限りだと、LMP1クラスに昔ほどの勢いはないですね。まぁ実際に始まってみると面白いのかもしれませんが。少なくともトヨタしかいない、大ハンデでどうにかレベリオンが戦えているだけだったここ数年のWECよりはマシだと思いますけどね。レベリオンなんか参戦終了しちゃったし。かわいそうに。
WECの勢いがなくなってきましたが、フォーミュラEも怪しい雰囲気が漂ってるみたいですね。アウディは今年で撤退、日産も撤退の可能性があるとか、そんなニュースが出ていました。
なんでも、フォーミュラEからは技術的なフィードバックが少ないそうな。これって結構致命的ですよね。参戦する意味がない。アウディは電気自動車でダカールラリーに出るそうです。
レースの電動化方面も苦戦するのかもしれませんね。フォーミュラEも中々楽しめたレースなので、今シーズンも見るつもりなんですが、続々と撤退表明!みたいなシーズンは勘弁してほしいものです。
WECについては、新規定のレースに、プジョーやグリッケンハウス、ポルシェなどが本格的に参戦するのは少し先の話。ハイパーカーのガチバトルが見られるまでには時間がかかりそうです。
・余談?
しかし、「ハイパーカー規定」は厄介なことになりましたね。参戦車が思いの外集まらない。世界中にハイパーカーは溢れているので、そういったメーカーが続々と参戦するかも?という思惑はあったと思うんですよ。
でもガチなのはトヨタだけ。トヨタについては、恐らくノーパワーの恨みが原動力です。あれで優勝していたら2018辺りで撤退していてもおかしくないですよ。
なんでかなーと考えて思いつくこととしては、結局ハイパーカーって、超金持ちのマウント取りの材料みたいなところがあるじゃないですか。「俺があのすげぇの持ってるんだぜ?」って言いたいだけのやつ。
売る方もそういうド金持ちをターゲットにしているので、車の金額も中身もどんどん先鋭化しちゃってて、なんだかよくわからない世界になりつつあります。スゲェ見た目とか、ワケワカラン素材とか、時速400キロ、シンジラレナイ未来システムとか。一定のルールの中で競うレースの雰囲気とはまるで合っていない。全体的にびっくり人間コンテストに近いですかね。
マクラーレン・F1はF1マニファクチャーだけあってサーキットでの性能にも気合が入っていたそうですが、ゾンダで有名になったパガーニは、レース活動をする気はないらしいです。オーナーからワンオフで「ゾンダのレースカー欲しい」と言われたら作る、そんな感じ。特定のルールに則ったグループGT3のような世界で戦う気は全くなし。
世界中にハイパーカーが溢れているのに、「ハイパーカーのレース」にはトヨタしかいないってのも寂しい話。しかしこのあたりにハイパーカーの本質があるような気がします。「○億円!」「へぇ!」・・・で終わっちゃう感じ。
億単位の車なんか、今後何をどうやっても買えない(買わない)ので、大多数の人にとっては遠い宇宙の話くらいどうでも良くなっちゃいませんかね。スーパーカーくらいの方が現実味があってちょうど良いと思うんですよ。
私は、クルマは乗ってナンボだと思ってるんで、どうせならハイパーカーもガンガンレースしてほしなぁと思うんですけど、実際に走らせてオカネ・クバルさんこと前澤氏みたいにゾンダで事故っちゃうのも困りますしね。どうしましょう。
金額については、最近はハイパーカーでも3億超えが当たり前になってきましたが、3億円ならレオパルドみたいな戦車が良いですね。絶対に煽られなさそう・・・。