Youtube(プレミアム加入済)を巡回していたら見つけた動画。ポルシェ・919ハイブリッドevoのニュル北アタック。凄まじいです。
タイムは5分19秒54。919が本気出したらこんなもん・・・らしいです。2018年の動画なので今更ですが、久々に面白いオンボードを見れました。
既に10年以上前の話ですが、初期型のR35がポルシェ911のニュルブルクリンク北コースのレコードタイムを破って話題になりました。その後は”ほぼ”プロトタイプみたいな市販車でのアタックばかりになってしまい、市販車でのレコードはあまり意味がなくなりましたね。GT-Rはあの価格で高性能だったのが良かったと思うんです。
ちょっと調べてみたところ、現在では4ドアのパナメーラでも7分29秒で走る時代。GT-Rニスモは7分8秒、911 GT2で6分40秒など、ちょっと意味不明な領域に突入中。4ドア車でもいつかのR35と同等の記録が出る時代になってしまいました。そのうちロードカーでも6分を切るようになるんでしょう。
しかし919はそんなロードカーの争いもどうでも良くなるくらいの速さ。919は特に「ブースト」がスゴイですね。直線加速の飛び出し方が明らかにおかしい。画面の表示で「アクセル」と「ブレーキ」の他に「ブースト」の表記がありますが、これがハイブリッドシステム=モーターの動作を示していると思われます。減速時にパワーを貯めて、加速時に一気に開放。ばびゅーんと加速しています。
このアタックしている919はWECでのレギュレーションから「開放」した特別仕様(だから”evo”)とのことで、元の919はV4エンジンとハイブリッドシステムの組み合わせで「900馬力」だったものを、evo化された結果「1160馬力」にパワーアップしたとのこと。
モーターのアシストは限定的なので、全域で1160馬力ではないんですが、それにしてもブーストが作動している時の加速はとんでもないですね。あっという間に300km/h。高速域でもどんどん加速しているので、アシストが切れずにそのまま加速したら500km/hでも600km/hでも行ってしまいそうな感じです。
最終のストレートでは369km/hを記録しているものの、モーターのアシストで最高速度には早々に到達していて、実は直線のほぼ全域でレブっているだけ。まぁギヤ比を変えたところで最高速を出せるのは最後の直線だけですし、全体でのタイムアップとか安全性を考えたらこの程度が落とし所なんでしょう。
今後この記録を破る車はどういったものなのか。919はハイブリッドですが、世界ではガソリン自動車追放の流れなので、電気自動車の開発が活発です。
で、現時点でのニュル北における電気自動車レコードは、フォルクスワーゲン・ID.Rの6分5秒。ID.Rはパイクスピーク用の電気自動車で、これを使ってニュル北のアタックをした際の記録のようです。「一人乗り電気自動車」は見た目が酷いのでタダでも要りませんが、ID.Rはスーパーカーみたいでいいですね。
このアタックではギリギリ6分切りを達成できていませんが、これは2019年のアタックなので、2021年にはこれを破る記録も出てくるかも。フォルクスワーゲンは排ガス事件の件を挽回するのに必死なので、当然このあたりの記録を狙ってくるでしょう。
そして、919の記録まであと40秒。あと少しですが、919に及ばない原因は割とハッキリしています。
これがアタックの動画。エンジン音ではなくモーター音のみ。超未来感。
これ、速いんですよ。確かに速いんですが、やっぱり気になるのは最高速が全〜然伸びてないこと。ニュル北を1周6分で走れるのに、最後の直線で250km/hにも届いていません。逆に言うと、最高速がその程度なのに6分切り寸前まで走れているのもすごいんですが、これも電気自動車の特徴。トランスミッションが1速しかないので最高速的な部分が苦手です。
電気自動車は基本的にトランスミッションが「不要」。5速くらいのギアをひとつだけ載せて、モーターの凄まじい低速トルクでそこを補っている、という仕組みだそう。
まぁ公道レベルならそんな仕組みでも何も困らないですからね。200km/hとか300km/hみたいな非実用域での性能を追求する必要があまりないし、わざわざトランスミッションのような重くてたくさん部品が必要な構造物をなくせることも電気自動車のメリットの一つなので、例えばリーフのような車にトランスミッションが付くことは今のところなさそう。
個人的には高速巡航用のギアがあれば良いんじゃねぇの?とか考えるんですが、私みたいな工学的シロウトが考えることは頭の良い人達が考え済みのハズなので、現時点ではそれを考えた上での「1速ギア」なんでしょう。将来的にはわかりませんが。
ポルシェも電気自動車のタイカンを出しているので、こういう極限のアタックも電気自動車ばかりになるんでしょうか。
まぁ速ければガソリンでも電気でも何でもいいのも確か。技術が進歩すれば市販車にも恩恵がありますからね。電気自動車が安く・良いものになるなら大歓迎。もっと安くなーれー。
・余談
なお、バーチャルの世界ではもっとすごいです。「ビジョン・グランツーリスモ」で収録された「ダッジ SRT トマホークX ビジョン グランツーリスモ」によって「3分4秒500」が記録されています。なんじゃそれ。
ビジョングランツーリスモは現実の車じゃないですから別に何とでも言える。これが発表された際に散々ツッコんだ記憶があるんですが、改めて”設定”を見ると今でも中々ツッコミどころのある車でした。
乗るのに7ヶ月のトレーニングが必要だとが、心身ともに最高の状態じゃないと乗れないとか、人間の反射神経の限界だとか、素材がグラフェンだとか、全体的に「さいきょうのくるま」みたいな設定でした。
まぁそれがVGTのコンセプトでもあるんですが。VGTという単語がすごく懐かしい。あれってどうなったんでしたっけ。
動画はなんだか早送り再生みたいですね。車の性能がどうとかよりも、これに対応できる人間がすごいなぁと思います。なんでただのレースゲーム好きの皆様が人間の反射神経の限界に挑まなきゃならんのかは不明ですがね。それに挑戦するのはF-22のパイロットとかで良いんじゃない?
この動画を見て思い出したんですが、当時これのタイムアタックでニュル北を走ってゴールドを取ったんですよ。でも「人間の反射神経の限界」とやらに長時間挑んだために、腕と足が凄まじい筋肉痛になって日常生活に支障が出た上、あまりにも異常に速い世界に慣れてしまった(というか慣れないと走れない)せいで”普通の車”で走れなくなってしまいました。感覚が違いすぎてベストタイムから数秒落ちになる始末。
あれはそういう車です。私はノートニスモとかZくらいの車で十分。別に人間の反射神経の限界に挑戦したくない。それを痛感した一台?でした。
ところで、トマホークXは”2035年の未来の技術を反映させた車”だそうですが、「V10+圧縮空気で2500馬力」という設定は、世界的流れの「ガソリンエンジン車追放」の対象になりませんかね。時代は電気なのに。
安易に「未来」を想像すると、ぶっ飛び設定以前の変なところで矛盾しちゃうのはよくあることです。1980年台の映画に出てくる未来で、モニターがブラウン管だったりするアレですよ。
そういえばもう一つのアレなVGTだったレーザー推進とかなんとか言ってたやつは、一応ガソリンエンジンじゃないから2035年でもOKなのかな、なんて。